ChatWork株式会社 CTO山本正喜氏インタビュー
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チャットワークはなぜ既読がつかないのかーCTO山本正喜氏が考える「人」「組織」そして「働き方」

 
「好きで活きて得意で稼ぐ週2日〜のIT仕事紹介PROsheetブログ担当のたぐちです。

さて、本日はChatWork株式会社のCTO山本正喜氏のインタビューをお届けします。

エンジニア観についてはもちろん、山本さんの考える「人」「組織」そして「働き方」、弊社も大変お世話になっているコミュニケーションツール「チャットワーク」の背景にある企業哲学についてお伺いしました。

体験入社制度で人材のミスマッチは減りました

__現在エンジニアは何人いらっしゃるんですか?

20人弱ですね。

__結構比率高いですよね。

そうですね、35人のウチの半分以上。去年一昨年と凄く攻めたんですよね。チャットワークってフリーミアムで、ストック型の月額300〜400円のモデルなので、「チャリンチャリン」をひたすら積み重ねていくモデルなんですけど、人手は掛けるので、もうぜんぜん(収益的に)合わないんですよ。でも人をちゃんと投入しないとスピードが上がらないので、かなり無理して人をとって、役員報酬下げて攻めるという。エンジニアがいっぱいになりました。

ようやく今エンジニアの数と売上がだいぶ追いついてきた感じですね、なんとか。凄くアグレッシブな経営してますよ(笑)

チャットワーク社のオフィス

チャットワーク社のオフィス。働きやすさを重視した工夫がいっぱいでした。

__意外ですね。順調そうに見えますが?

外からは順調そうに見えると思うんですけど、やっぱりチャットワークみたいなサービスって、普通外からお金借りないと出来ないですよ。VCとか何億も入れてやらないと無理ですね。調達しないで自分でリスクとって人を雇ってっていう、特にこういうストック型のビジネスは最初の2〜3年積み上がるまで如何に耐えるか、みたいな感じなので。で、上がってくるのを見越して投資するっていうのがギャンブルなんですよ。フリーミアムモデルってフリーで暫く使って「便利だな」と課金するものなので、その最初の半年とか1年で本当にこのサービスの有料率って上がるのかが見えないので怖いんですよ(笑)

失敗した1個前のサービスのユーザーはフリーではユーザーが増えたんですけど、ぜんぜん有料にならなかったんですよ。フリーでいくら評判良くても有料にならなかったら続けられないので、そこがやっぱめちゃくちゃ大変でしたね。価格設定とかフリーの制限とか、緩すぎても有料にならないし、キツすぎてもそもそも使ってくれないし広まらないし、バランスを見極めるのが難しくて、最初の数年はそこで試行錯誤しましたね。今はいいバランスになってきましたけど。

__エンジニアの採用も担当されていらっしゃいますが、主にどういったところを見ていらっしゃいますか?

ウチは完全にマインド重視ですね。人を見ています。スキルは二の次。ウチは体験入社っていう制度があって、面接のあと、採用出来るレベルであれば2日間体験入社してもらって、課題をやってもらったり、エンジニア全員でランチしたり、皆に質問したりとかして。体験入社の時にエンジニア全員がOKって言わないと採らないんです。最後に全員集めて「どう?」みたいな(笑)2日間いると隠せないじゃないですか、面接っていくらでも作れるし、逆に言うと僕ら企業側も隠せるじゃないですか。面接ではいいコトいってても実際はブラックな可能性もありますし。

それをやってから人材のミスマッチは相当減りました。ウチの社長がよく言うんですけど「いきなり結婚してみるんじゃなくてまずは同棲してみましょう」っていう(笑)お互い見えるものがあるし、化粧してない姿も見せ合いましょうよ、みたいな(笑)で、逆に体験入社してみて向こうから「合わないです」って言われるケースもありますね。

__スキルや技術面など他に重要視することはありますか?

これは一般論と同じだとは思うんですけど、それまでのキャリアとかやってきたことにロジックがあるかどうかを結構見ています。転職が多いのは別にいいんですよ。その会社に入って何がダメだったから次にいったっていう説明がキレイでロジックが通ってるのであれば。面接の時はそれを見ますね。

また、僕らの会社で何をやりたいか、その部分でちゃんと意思を持ってくれてるかどうかを見ています。それと社風にも含まれてますが、柔軟性ですね。ガチガチのSIerで長年やってましたという人は、恐らく文化が合わないかもしれません。仲間とか家族とか友達みたいな感じの雰囲気なので、そこに馴染むかどうかが大事です。

__新卒は採らないんですか?

新卒は採ってなくて、新卒2〜3年目くらいの中途採用が多いですね。25〜6歳の子で、プログラムのかけるセンスのある子を採用しています。染まりきっていないので、ウチの文化にも馴染みやすいし、そういう若手の子たちが頑張ってて、それプラス、スーパーなエンジニア達もJoinしてきてくれています。そういう体制もここ1年くらいですね。それまでそんな人達を取る会社じゃなかったんですけど、今は規模が規模なので、ちょっとでもサービスを落とすと大変な事になりますし。これから2〜3年かけてコアなエンジニア集団になっていくと思います。

組織はどんどん小規模化していく

__エンジニアのこれからについてはどう考えますか?

大企業になればなるほど専門性が高くなるので、本当に技術一本のプログラマーで食っていくなら大企業の方がいいですね。上にマネージャーがいて、スペシャリストで成り立つ組織ですので。で、小規模になるとゼネラリストじゃないと駄目なんですよ。スペシャリストを養えるほどの売上がなくそんな必要性もないので。スタートアップやりたいならなんでも出来ないと駄目ですね。で、大企業になると専門性が必要になって行くから、逆になってきます。よくある話ですけど。

でも組織って小規模化していくと思いますよ。4人前後のチームが一番効率が良いですね。GoogleとかTwitterのような上手くいってる会社ってユニット単位で動いてますし、それが大企業にも広がっていくんじゃないかなと。やっぱり小さいユニットじゃないと主体性って発揮出来ないんで、小さいユニット化していく、割っていくところが、世の中の働き方の流れとしてはメインストリームになると思います。

チャットワーク社オフィス

とてもおしゃれなオフィス。スタッフのモチベーションも上がりそう♪

マネジメントもプログラミングと同じ

__山本さんご自身は自分をどういうエンジニアだと思っていますか?

僕の場合、マネジメントも企画もデザインもマーケティングもサポートもやるっていう違う意味のフルスタックエンジニアなんですよね。

一時期はメインプログラマーとしてやっていた時期もあったんですけど、エンジニアって会社が大きくなってくるとどうしてもマネージャーやらなきゃいけないじゃないですか。マネージャーってやっぱり嫌なんですよね。つまんないって思うし、僕も「やだな、コード書いてたいな」とジレンマがあって悩んでた時期がありました。結局、マネジメント的な観点もチームビルディングもプログラミングで言うオブジェクト指向みたいなもので、人がオブジェクトになってて、その人をどう使ってモノを作っていくか、マクロで見たら、結構プログラミングに似てるんですよ、人って。それでマネジメントっていう言語を使ったプログラミングなんだなと気付いた事があって、その時からあまり拘らなくなりました。

モノづくりも規模が大きくなると一人では出来ないので、結局チームづくりとかヒトづくりになってくるんですよ。だから教育とかチームマネジメントとかそういうところが僕の役割ですね、モノづくりの領域において。なので、僕自身は自分の事をエンジニアとあまり思ってなかったりするんですよね。

__お話を聴く限り、どちらかと言うと経営者に近いですよね。

そうですね。そういう意味で言うと本来のCTOっていうのはそういうポジションですね。ちっちゃい企業だったら一番プログラミング出来る人ってのがスタートアップには多いんですけど、大きい企業のCTOっていうとマネジメントやたりとかどっちかっていうと経営側にコミットしてる感じですね。

今グロースハッカーが話題になったりと、技術とマーケティングの垣根って薄くなってきていますよね。僕はどちらかと言うと、デザインと技術、マーケティング、この3つの間を埋めるというのがこの時代の鍵となると思っていて、そのあたりの仕組みづくりを仕込んでいます。この2年くらいでそれをやろうとしています。

また、VCも入れずに自己資金だけでサービスを創って海外でも成功するっていうのもやりたいです。日本から。たぶんどこも成功していないので、初事例を狙って頑張っています。

チャットワークは僕らの働き方を体現しているツール

__座右の銘や好きな言葉を教えてください。

チャットワークCTO山本正喜氏

松下幸之助が、松下電器は何を作っている会社ですか?って聞かれた時の言葉で

「松下電器は人を作っている会社です。併せて電化製品を作っています。」

みたいな言葉があって、それが大好きなんです。

人づくりって人を育てるっていう意味ではなくて、良いモノを作りにはやっぱり組織を作らなきゃいけないし、その人が一番輝ける強みを活かせる環境とか善所を引き出すような体制を作るというのが、モノづくりにはあるんじゃないかな、と。それもエンジニアリングなんじゃないかなってのが僕の考え方ですね。

やっぱり自立して動く組織が好きなんです。これは僕の考え方なんですけど、単純にタスクが振ってきて、それをするっていうのはさせないようにしてるんですよ。作業者はいらないくて、タスクの背景を理解して自分で考えて判断して欲しいんです。チャットワークはそれがしやすいような設計になってるんですよ。

チャットワークって僕らの働き方を体現しているツールで、結構、変な仕様がたくさんありまして。まず、チャットツールのくせに相手がオンラインかどうかわかんないんですよ(笑)

__そうですよね。それ凄く助かります(笑)

既読がわからないようになってたりとか、書いてるときに「◯◯さんが入力中です」ってのを出さないんですよ。チャットって普通はリアルタイムでやり取りする、自分もオンライン、相手もオンライン、っていうのが前提なんですけど、僕らのチャットの使い方って掲示板とかメーリングリストに近くて、投げておいていつでも返事していいっていう使い方、つまり非同期なコミュニケーションを推奨しているんです。やっぱり相手がオンラインなのがわかると返事期待するじゃないですか。

__わかります。凄く気になっちゃう。

オンラインだとすぐ返事しないと行けないからオフラインに変えておこう、とか(笑)でもそれを「退席中」とかいちいち変えるの面倒くさいなとか思いますよね。「入力中」だと待っちゃうし、オンラインだといつ切り上げるか迷うし、雑談が始まったらどっちが最後にどっちが返事して終わるのかとか、そういうのが絶対嫌なんです。

chatwork

__あえてわからないようにしてるんですね。

あと、チャットワークってグループに新たに人が入ってきても過去ログが見えるんですね。例えば上流の人達が色々話合って企画して、これやっといてと言われても、全然文脈がわかってなかったりするわけですよ、作る側は。で、作ったらそうじゃないみたいな事あると思うんですけど。技術のスペシャリストからすると、「本当はこっちがいいのになんでこうするんだろ」と思いながら、とりあえず言われたとおり作ったけど上の人はそれに気付かなかったりするっていう、そういうのは絶対良くないですよね。

そういう事がないように、各自でタスクの背景を理解して貰うために過去ログを読めるようにしています。ディテールを決めてタスクを渡すっていうことはあえてせず、自分で考えて判断してやってというスタンスです。一人ひとりが経営者じゃないですけど、意思決定権を持っててやっていって欲しいですね。

__既読をつけないのは何か意味があるのでしょうか?

管理してる感をできるだけなくすっていうのが大事なので、僕らは絶対つけないと思うんですよ。「欲しい」とはよく言われますけど(笑)欲しいっていう人も多いし、絶対つけてほしくないって言う人も多いですね、既読については。やる側はつけてほしくなくて、マネージャーとかはつけて欲しいんですよ(笑)

あと、チャットに「いいね」機能をつけて欲しいっていう意見も多いですね。「いいね」機能自体はFacebookみたいな使い方として良いと思うんですが、ビジネスの現場だと「いいね」をつけることで読んだって事を判断したいという運用が出てきてしまうんです。でもね、それをすると見たら必ず「いいね」をしなくちゃいけいというルールが出来るんですよ(笑)でも実際にそういう運用をしている会社がいっぱいあるんですよ、社内SNSとかで。いいねと思ってなくても読んだら「いいね」を押すっていう、「もはやいいねじゃないじゃん!」みたいな。お互い信用してない感じが嫌いなので、信頼があった上でお互い信用した上でワークするっていうツールがいいなと思っています。

また、管理者が一般ユーザーのログを見られないようにしています。ただ、大企業向けにはコンプライアンスの問題があって、(エンタープライズ版の)KDDIチャットワークだけはログのエクスポート機能をつけることが出来ます。例えばセクハラとか情報漏えいとか追えるように。でも小規模のところはない方がいいかなと。

他にもチャットの発言数を出して欲しいとか色々要望あるんですよ。あるんですけど、そこをあまり管理するような仕組みは提供したくないんですよね。「いいね」機能をつけて、「いいね」数をランキングで出して欲しいとか、気持ちはわかるですけど絶対にギスギスするじゃないですか。

僕らとしては社風がよくなるようなツールにしたいです。僕らが考えるIT経営ってそういう事で、「餅は餅屋」っていう考え方なんですけど、僕らの解釈ではITで出来る事はITでやらせて人は人にしか出来ない事をやろうというのがあって、自動化出来るものはITでやって、ハートフルなコミュニケーションに時間を取れるようにしようと、そういう思想です。その為のベースとなるツールを作ろうという思想がチャットワークには入っています。

なので、結構チャットワークって組織によっては合わないと思います。僕らの働き方の哲学がすごく入っていますね。

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以上、山本正喜さんのインタビューをお届け致しました。
ご協力ありがとうございました!

PROsheet

たぐちゆうき

たぐちゆうき

PROsheet ブログのメインライター。 エンジニアの皆さんの「好きで活きて得意で稼ぐ」を応援します!

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